あなたは正しい日本語を使えますか?(其の壱)

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日本語の使い方というのは非常に難しいもので、日本人でも正しく使えていない場合が多くあります。
そこで今回はあなたがどこまで正しい日本語を使用できているかをチェックしましょう。
下記にある長文があります。その中で"使い方が誤っている"という日本語を見つけ出してください。全て見つけ出すことができたらあなたの日本語力はたいしたものです。

<ルール>
・「全然できる」のように市民権を得たものは許可する
・「小僧肉切りゃ今朝まで憎い」のようにいろんな間違いがあってもこれは1語句として1間違いとする
・この文章の会話でわざと間違えたというものはないものとします
・警棒は棒のことです。警察帽の間違いではありません
・会話中では、「ら」抜き言葉が一般的なので、「ら」抜き言葉は全般で無視してください
・この話はフィクションだ。実際の団体・人物はいらっしゃいません
・物語のつじつまが合わないという意見は聞き入れません


 元旦の夜から仕事とはついていなかった。村田はA交番の奥の部屋で紫煙を吐きながら、後悔していた。正月だからこそにぎわう所もあれば、ここのように寂れ果て、物音ひとつしない所もある。
 これと言うのも先日の警棒の盗難のせいだった。村田の警棒が何者かによって盗まれてしまった。その失態から汚名挽回するために、いろいろ尽力を尽くしたつもりだった。しかし結果的にはよいように使われるだけに終わり、今だに不審感を払拭できずに、今日の宿直も為すがままに任されてしまっていた。
 大きな事件もなく、すっかり手持ちぶたさになっていた。交代の田所が来るのは明日の朝だ。娘が熱にうなされてしまっているから夜のうちには来られないとの連絡があった。
 田所には三人の子供がいて、半年前に念願の女の子が生まれていた。まさに一姫二太郎となって喜んでいたのを村田は思い出していた。その一番下のまだ赤ん坊であろう娘が熱を出したのだ。仲の良い田所の頼みであったために、承知した。これが、気が置けない仲根部長の願いだったら、怒り心頭に達していただろうと容易に想像できる。村田は仲根が心底嫌いだった。
 そのとき、遠くで人の声がしたような気がした。それは女の叫び声のように感じた。この静かな土地にしては異和感のあることだった。妙な胸騒ぎがした。

 村田の想像は的を得ていた。交番の近くには巨大な墓場がある。そこでやらせ番組を作ろうと考えたロケ班が来ていたのだ。明日がロケ本番で、今日はシュミレートしていたらしいのだが、一人の女性タレントの姿が見えなくなったのだ。先に宿に帰ったと考え、スタッフは墓場を引き上げようとしたのだが、場内でその女性は襲われた。あわやというところで駆けつけたスタッフに犯人は取り抑えられた。
 村田が現場保存していると、A警察署から刑事がやってきた。顔見知りであるが、仲はよくなかった。
「はい、どいてどいて」
 現場保存するハコ勤務の警官は所詮捜査には役不足だ。だいたい一人で現場保存なんて本来ありえないのだが、これ以上登場人物を増やしたくない作者の都合だった。それでも村田は興味深々に犯人のことを野中巡査に尋ねた。
 すると、犯人と思しき男は最近、この地区で多発していた強姦事件の犯人である可能性が高かった。若い女性ばかり狙う確信犯であるという。しかし、強姦罪は被害者による申告罪となる。女性たちが泣き寝入りすれば刑は軽くなっていく。そう、早稲田のバカ野郎グループのように。そう思うと村田は何かやるせなく感じた。

 そのまま眠ることもできず、交代の田所がやってきた。
「娘さんはどうなった?」
「ええ、おかげさまでよくなりましたよ」田所はうれしそうに言った。
 娘か......村田には子供がいないので、その実感はわかない。しかし、その子が大人になって、今回のような事件には巻き込まれてほしくなかった。田所が今回の事件を知ったらどう思うだろうか。村田は考えていた。
「村田さん、何たそがれているんですか?」
 田所が笑顔を見せた。よほど娘の病気が治ったのがうれしいのだろう。
 交番の前を子供たちが耳障りのよいはしゃぎ声を上げながら通り過ぎていった。いつの間にか日は高く昇っていた。


解答は↓
間違った日本語は20個でした。

解説
  1. 元旦の夜 → 元旦とは元日つまり1月1日の朝のこと。この場合、朝と夜では矛盾している
  2. 汚名挽回 → 汚名返上名誉挽回の混同。この場合は、汚名返上。
  3. 尽力を尽くした → 重ね言葉。尽力は力を尽くすこと。この場合は『力を尽くすを尽くした』となってしまう。
  4. 今だに → 未だに(※「今でもまだ」という意味で「今だに」をOKとする辞書などもあるかもしれませんが、本来「未だ~ない(否定)」で使う用法です。いまだかつてを「今だ嘗て」なんて書きませんよね。「今だ勉強している」などという肯定での用法は、「全然勉強ができる」と同様にいつの間にか浸透してしまった用法です)
  5. 不審感 → 不信感
  6. 手持ちぶたさ → 手持ちぶさた。手持ち無沙汰
  7. 熱にうなされる → 熱が出ると悪夢を見てうなされるケースからこういう誤解が生じる。うなされるは『夢』に対してのみ使う。この場合は熱に浮かされるが正解
  8. 一姫二太郎 → 「一人の女の子と二人の男の子」という意味ではなく、一人目が女の子で二人目が男の子がよいという単なる験担ぎ
  9. 気が置けない → 気が置けないはよけいな気遣いをしなくてよいかなり仲のよい人のこと。
  10. 怒り心頭に達して → この『頭』が混乱の元。『頭にきた』という表現を思い出すと達するでいいと思ってしまう。ここの頭は心の添え字。あくまで怒りが心からどうなるかが問題だから怒り心頭に発する(起こる)でなければならない。
  11. 異和感 → 『異』と『違』。意味的に似ているから混同しそうになる。ここは違和感のほうだ。『異』のほうは比較対象とするものがあるときに付く
  12. 的を得て → 的を射て
  13. ロケ班 → ロケハンはロケをするグループではなくて、ロケーションハンティング、ロケをする場所を探すこと、の略語だ。だからこの場合『番組を作ろうと考えてロケハンに来ていたのだ』としなくてはならない
  14. シュミレート → 『SIMULATE』だからシミュレートでなくてはおかしい
  15. 役不足 → 役不足はその役が自分には軽すぎることだ。この意味で解釈すると『捜査なんて簡単なこと交番の人間には退屈すぎてあくびがでらあ』となってしまう。
  16. 興味深々 → 興味津々
  17. 確信犯 → 確信犯とは思想的・宗教的・政治的な確信に基づいて行われる犯罪のこと。すなわち自分の行っていることが正しいと固く信じて行われるものだ。
  18. 申告罪 → これは本人が告げるという意味だから親告罪が正しい
  19. たそがれて → たそがれる(黄昏る)には夕方になるという意味しかない。夕方に物思いにふけるシーンからそういう誤解が生じたと思われる。
  20. 耳障りのよい → 耳障りは聞いていて嫌になることだから、よほどのいやみでない限り耳障りがよいという表現はありえない



さて、あなたはいくつ正解できただろうか!?

コメント(2)

「文頭から「なので」っていうのもおかしいですよ。

ご注文の方、以上でよろしかったでしょうか?
がどう間違っているのでしょうか?