消えたひらがな、使われないひらがなは?

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現在使われている五十音は50個の発音?

日本語には五十音というものが知られています。文字通り、50個の基本発音があるということです。実際には濁音(がぎぐげご)や拗音(きゃきゅきょ)などを加えると発音はもっとあります。
ちなみに「ん」も五十音からは外れた発音にあたります。五十音はあくまで「あいうえお」の母音に「あ行~わ行」の子音(あ行はなし)10個を掛け合わせたものです。
しかし、現在で知られている50音の中でや行「Yi」「Ye」(正式な音価は「Ji」「Je」)、わ行の「Wi」「Wu」「We」は使う事がない(同じ発音、字なので通常省略されます)ので、45音が基本発音ということになります。「ん」をプラスして46音を日常で使う基本発音とするのが現在一般的です。

しかし、ひらがなは実はもう2つ存在します。
「Wi」にあたる「ゐ」(カタカナはヰ)と、
「We」にあたる「ゑ」(カタカナはヱ)です(Wuは現在「う」です。後述)。

この字を見ると、古文で習う旧仮名遣い(歴史的仮名遣い)であり、現在のひらがなではないのではないか、と思われますが、れっきとした現在登録されているひらがなです。
戦後、一度ひらがなからは消されましたが、日本の文学を学ぶ上で必要だったため、復活しました。ただし、一般的に使用する事はなく、昔の文学で使用されているものをそのまま表す時にだけ使用します(人名には使用できるが、例えば字は「椎奈」で読みは「しゐな」とはできず、漢字と同じ扱いで「志ゐ奈」「ゐまる」のようにするのは可能。※キラキラネームの恐れあり)。
発音上は昔は[i]と「wi」で区別されていましたが、紆余曲折ののち、同じ発音になりました。

日本語で使用される発音47音(「ん」を除く)を重ならない文字にして作ったものがいろは歌です。

 いろはにほへと ちりぬるを
 わかよたれそ つねならむ
 うゐのおくやま けふこえて
 あさきゆめみし ゑひもせす

よくできています。

「お」と「を」の謎

さて、発音上「い=ゐ」「え=ゑ」で、わ行の方は現在使われていない事はわかりましたが、もうひとつ同じ音「お」と「を」があることを我々日本人は知っています。
元々は違う発音「o」と「wo」だったため、2種類ありますが、今では同じ音として発音されます(「を」を助詞の「を」とか難しい「を」と言ったりします)。これは「を→お」に併合とはならなかったのでしょうか。

戦後すぐに「現代かなづかい」について策定するときに、「を」は廃止して「お」になりかけましたが、ゐやゑに比べ、助詞としての使用頻度が高かったため、混乱してしまうことを恐れ、生き残りました。助詞の「は」「へ」もこの時同様に生き残りました(日本人はよくこの2つを無意識に発音の使い分けができるものですね)。
しかし、本当は暫定的な措置であり、将来的には廃止する方向でした。しかし、1986年に改めて「現代仮名遣い」が策定されましたが、あまりにも一般的になりすぎてそのまま使用する事になりました。「を」は原則助詞として使用する場合にのみ使用するわ行う段の正式な五十音の一つです。固有名詞で、一部「まなべかをり」のように、歴史的仮名遣いでの表現をすることもあります(ゐ、ゑ同様に漢字の様な扱いです)。

言葉はその都度、使いやすいように変化していくので、将来的には、「わたしわ とうきょうえ しんかんせんおつかって いきます」と表現するようになる可能性もあるかもしれません。

消えたひらがな

ひらがなは、漢字を崩して作られた文字です。「あ」は「安」から、「い」は「以」からなど。元々文字自体が存在しなかった日本(大和の国)は、中国との交流により、漢字が先に入ってきて、今まで使っていた言葉を漢字にあてはめていき(「夜露死苦」みたいなことと同じ事ですね)、その漢字を崩して書いていたらひらがなが誕生したというわけです。主に和歌や女流作家によって使用されていました(だから女文字と呼ばれていたわけです)。

ところが、最初に取り決めをしてひらがなを作ったわけではなく、草書体がだんだん崩れてできた文字なので、みんなが好き勝手な漢字をひらがなにしていきました。その結果、たとえば「か」のひらがなは「可、加、閑、我、駕、賀、家、歌」など「か」と読んでいたいろんな漢字を元にたくさんのひらがなが存在したわけです。50音に対して200以上の文字があったと言われています。
これでは勉強しづらいということで、明治33年の小学校令施行規則改正によって使われていない文字を廃止(変体仮名or異体字と呼びます)して、今の文字だけが残りました。「を」はこの時の改正から逃れたようです。

時々、この変体仮名を用いた看板などを見かけることがあります。

「うふぎ」じゃなくて「うなぎ」です。「奈」を元に作られた字です(現在の「な」も「奈」からですが、このように同じ字から各々が違ったひらがなを作っていたというケースもあります)


花札の赤短に描かれる短冊ですが、「あのよろし」ではなく「あかよろし」です。「可」を元に作られた文字です(上に点があるのがミソ)。


「しるこ」ですが、「し」は「志」を崩した仮名です。「こ」は「古」を崩した文字。


「~さん江」でよく使うこの「江」も仮名です。でもこの場合は原型の漢字をそのまま使っていますね(「江」自体には「~へ」の意味はありません)。崩した正式なひらがなはです。

ちなみにこの「江」は「え」の変体仮名でもあるが、「や行え段」の字として採用されていた。この採用というのが何かというと、「や行い段」「や行え段」「わ行う段」の3つは元々は別な発音をしていたのであろうが、早い段階で日本文字界で淘汰されてしまったらしく、過去の文献にも(今のところ)登場しない。
明治時代に五十音表に隙間があるのが気持ち悪かったらしく、
「や行い段」→
「や行え段」→
「わ行う段」→(原型の漢字不明)
という文字を当てたが、すぐに消え、まさにまぼろしの文字となった。

このように、中国から漢字を輸入し、ひらがなを作ったのだが、現れたり、消えたり、一緒になったり、別なものになったりと時代ごとに様々な変化を起こしつつ、今の状態に落ち着いています。もしかしたら今後、変化することもあるのかもしれません(ラ行が英語のように「r」と「l」になったり、「ん」が中国語のように「n」と「ng」になったり・・・・・・)

コメント(2)

キラキラネームの意味、分かってねえだろ?

初めまして。以前から気になっていた変体仮名について検索して、こちらに伺いました。お蔭様で目から鱗が落ちた思いで、気分スッキリです!(笑)大変参考になりました。本当に有難うございました!