名作「バルーンファイト」の類似品に隠されたエピソードとは?

1985年に発売された名作ファミコンソフトに「バルーンファイト」がある。この年はシンプルで誰でも楽しめるファミコンらしいゲームがたくさん出ており、全てが名作だとも言われる黄金年だ。
やったことがない人でも「バルーンファイト」という名前を聞いたことがある人はいるのではないだろうか。

風船をつけた人が、割られないように気をつけながら敵(サル?)の風船を割るというストーリーもない単純なゲームだ。


バルーンファイトが軽快になった感じのゲームの正体は?
2年後の1987年に「ジャウスト」というファミコンゲームがHAL研究所(専門学校HALとはまったく無関係です)から発売されます。







人がダチョウになっただけ(めっちゃ速い)で、バルーンファイトとくりそつじゃね?

と思うかもしれません。

しかし、実際は「バルーンファイト」が「ジャウスト」を元に作ったゲームだったのです。

あれ? 順番がおかしくね? と思うでしょう。

「ジャウスト」はファミコン自体が発売される前、1982年にアメリカのゲーム会社によって作られたアーケードゲームだったのです。

元々、このジャウストを移植しようとして、任天堂とHAL研究所が共同開発していましたが、版権問題が起こり、発売ができなくなってしまった。
途中まで開発していてもったいないと思ったのか、開発者4人でアレンジをして、バルーンファイトが生まれたのだ。開発者の一人、岩田氏は、後にHAL研究所の社長になり、現在の任天堂社長になっており、今の任天堂の礎はバルーンファイトにあると言っても過言ではない(たぶん過言です)。

バルーンファイトは、1984年にアーケードゲームとして開発され、翌年にファミコン移植されています。アーケード版は、縦に2画面分スクロールし、バウンド力はジャウストに近く、ファミコン版より難しい。ファミコン版は容量などの問題もあり、易しくしたのだろうと思われる。

その後、アメリカの会社から「出してもいいよ」と言われたのか、版権問題がクリアになったので、以前作った「ジャウスト」を(ほとんどアレンジもなく)HAL研究所から出すことになった。

しかし、すでにファミコン界では
 (c)スクウェア・エニックス
ドラゴンクエストIIが9ヶ月前に発売されており、3ヵ月後にはドラクエIIIも発売されると言う、RPG黎明期。5年前のゲームの移植作品を今更出しても話題になるはずもなかった。。。

ここまでの経緯としては、
1982年 アメリカのウィリアムス社が「ジャウスト」開発・発売
1985年 任天堂とHAL研究所で「ジャウスト」の移植を試みるが、版権問題からお蔵入り
1985年 ならばアレンジして出しちゃおうとして、「バルーンファイト」を開発・発売
1987年 「ジャウスト」出していいよ、と言われ、2年間埃がかぶっていた作品を今更発売

ということになる。

バルーンファイトを基準にするならば、ジャウストは「バルーンファイト ゼロ」と言っても差し支えないだろう(たぶん差し支えます)。


音楽もシステムもバルーントリップ丸パクリのゲームの正体は?
バルーンファイトにはおまけで(こっちの方がおもしろいという人もいます)バルーントリップという、ひたすら障害物を避け風船を取り続けていくゲームが存在します。


それでは、1992年にキャラクターソフトから発売されたファミコンゲーム「ハローキティワールド」を見てみましょう。







え? システムどころか音楽も最初のほう同じじゃね?

ボーナスゲームも
 

同じです。

よく訴えられなかったなぁと感心してしまいます。

ところが・・・

タイトル部分に注目してもらいましょう。

ん? MARIO CO.,LTD      株式会社 マリオ!?

そう、名前からも察せられるとおり、任天堂の子会社なのです。

このゲームの販売元である、キャラクターソフトはサンリオの子会社であり、そんなところでプログラマ抱えてオリジナルゲームなど作れるはずもなく、開発は外注して販売していました。

しかし、このゲーム自体が「Balloon Kid」という海外ゲームボーイ用に作られたゲームのキャラクター置き換えゲームなのです。

開発陣には、バルーンファイトの開発陣も入っており、音楽もやはり同じ田中宏和氏だったのです。同じ人たちがアレンジして作ったのだから、似たゲームができて当然だったのです。
ですからこの作品を「バルーンファイト2」もしくは「バルーンファイト Easy」などと言ってもいいかもしれません(言い換える必要性はないですが)。
ちなみにこのゲームは、2000年に日本のゲームボーイカラーで「バルーンファイトGB」という名前で発売されています。

どうもこうタイミングが時代から一歩遅れている気がしないでもないです。

それから時がたち、2006年にDSで会員限定の非売品として「チンクルのバルーンファイトDS」が開発されました。


縦2画面になったことをのぞけば、バルーンファイトと同じです。むしろこれは、バルーンファイト アーケード版の原点に戻ったのでしょうか。

1990年 海外版ゲームボーイのため「Baloon Kids」を開発
1992年 ファミコンに逆移植して、サンリオキャラの「ハローキティワールド」として発売
2000年 「Baloon Kids」日本版をゲームボーイカラーで発売
2006年 原点回帰でDS版「チンクルのバルーンファイトDS」


このようにバルーンファイトというなんでもない一作品だが、形を変えつつ長く愛されていることがわかります。そして、開発の皆さんはみんな大出世している偉大な作品だと言うことがわかります。

(c)任天堂
(c)キャラクターソフト